初めに・・・

「何か面白いことを話さなきゃ……」

そう思った瞬間、頭の中が真っ白になったことはありませんか?

さっきまで考え事をしていたはずなのに、いざ人を目の前にすると、頭の中はまるで閉店後のお店。商品どころか、店員さんまでいなくなっています。

職場の同僚との雑談、上司との何気ない会話、久しぶりに会った友人との食事。

せっかく話す機会があるのに、「何を話そう」「つまらない人だと思われないかな」と考えすぎて、
気づけば会話よりも脳内会議のほうが盛り上がっている。

しかも、その会議はだいたい長引きます。

「あの返事、変じゃなかったかな」

「もっと面白いことを言えたんじゃない?」

「いや、そもそも話さないほうがよかった?」

帰宅してから反省会を始め、布団に入っても議題が尽きない。できれば定時で閉会してほしいものです。

社会人になると、仕事でもプライベートでも、人との会話に気を遣う場面が増えてきます。

でも、ちょっと待ってください。

会話って、毎回そんなに頑張らないといけないものでしょうか?

実は、心地よい会話に完璧なオチも、芸人さんのような話術も必要ありません。

今回は、会話が苦手な人でも気楽に試せる、自分の言葉で伝えるコツをお話しします。

社会人の会話って、どうしてこんなに難しいの?

学生の頃は、好きな音楽やゲームの話をしているだけで、あっという間に時間が過ぎたこともあったでしょう。

ところが社会人になると、そう簡単にはいきません。

上司には失礼のないように。同僚には気まずくならないように。

初対面の人には感じよく。

頭の中では、あれこれ考えています。

「この話、しても大丈夫かな?」

「もう少し気の利いた返事がいいかな?」

「そろそろ笑いを取ったほうがいいのかな?」

いやいや、こちらは仕事を終えたばかりです。

できれば脳みそにも休憩時間をいただきたい。

それなのに、雑談になると急に「会話を盛り上げる係」に就任してしまうんですよね。

でも、安心してください。

話が上手な人が、必ずしも一緒にいて心地よい人とは限りません。

面白い話を次々にしてくれる人も素敵ですが、何気ない話を「うんうん」と聞いてくれる人も素敵です。

特別な話題がなくても、一緒にいるとなんだか落ち着く。そんな人、あなたの周りにもいませんか?

目指したいのは、何を話しても笑いが起きる人ではなく、お互いが無理せず話せる人なのかもしれません。

完璧なオチがなくても、会話はちゃんと成立する

会話をしていると、つい最後に面白いことを言いたくなるものです。

せっかく話したのだから、相手に笑ってほしい。できれば「それ、面白いね!」なんて言ってもらいたい。

その気持ち、よくわかります。

ただ、毎回オチを用意しようとすると、日常生活が大変です。

朝起きて、朝ごはんを食べて、駅まで歩く。

さて、この話のオチは何でしょう?

……ありません。

残念ながら、駅まで歩いただけです。でも、それでいいんです。

例えば、同僚に「昨日、何してたの?」と聞かれたとします。

「特に何もしてないよ。家でゴロゴロしてた」

これだけでも立派な返事です。

さらに、「久しぶりにゆっくりできて、最高だった」と付け加えれば、

相手も「いいね、私も寝て終わったよ」なんて話してくれるかもしれません。

気づけば、お互いの休日がゴロゴロ自慢大会に。優勝賞品はありませんが、なんだか楽しい時間です。

会話は、漫才のように最後に笑いを取らなくても大丈夫。

何気ない言葉のやり取りそのものが、心地よい時間になることもあるのです。

自分の言葉で話すための、ちょっとしたコツ

では、どうすれば気負わずに会話ができるのでしょうか。

難しいテクニックは必要ありません。まずは、次の3つを試してみましょう。

① 気の利いた返事より、素直なひと言

相手から話しかけられたとき、すぐにいい返事が思い浮かばないことがあります。

そんなとき、無理に名言を生み出そうとしなくて大丈夫です。

例えば、同僚が「最近、仕事が忙しくてさ」と話してくれたら、

「そっか、大変だね。ちゃんと休めてる?」

これだけで十分です。

「忙しいときこそ、時間管理が大切だよ」なんて、急に自己啓発セミナーを始める必要はありません。

もちろん、相手がアドバイスを求めているなら別ですが、ただ話を聞いてほしいだけのこともあります。

そんなときは、気の利いた言葉よりも、素直なひと言のほうがうれしかったりするものです。

② 出来事に、自分の気持ちを添えてみる

自分の話をするときは、何があったかだけでなく、どう感じたかも伝えてみましょう。

例えば、

「昨日、ラーメンを食べたんだ」

これでも間違いではありません。

でも、「昨日、ラーメンを食べたんだ。おいしすぎて、スープまで飲みそうになったよ」と言えば、ちょっとだけ様子が伝わります。

健康のためにスープを残したのか、最後まで飲み干したのか。そこにドラマが生まれるかもしれません。

いや、ラーメンの話で大河ドラマほどの展開は必要ありませんが。

大切なのは、立派な出来事を話すことではなく、自分が感じたことを少し添えること。

「うれしかった」「びっくりした」「思ったより楽しかった」。

そんなひと言があるだけで、会話はぐっと自分らしくなります。

③ 沈黙が訪れても、慌てない

会話が途切れた瞬間、急に落ち着かなくなることはありませんか?

何か話さなきゃ。何でもいいから話さなきゃ。

そう思って焦った結果、「そういえば、昨日の天気が……」と、天気予報士でもないのに天気の解説を始めてしまう。

もちろん、天気の話も立派な話題です。でも、無理にひねり出さなくても大丈夫。

相手も、少し考え事をしているだけかもしれません。

友人との食事なら、料理を食べながら「これ、おいしいね」と言うだけでもいいんです。

沈黙は、必ずしも会話の失敗ではありません。

ずっと話し続けなくても気まずくならない関係って、なかなか素敵だと思いませんか?

うまく話そうとするのをやめたら、会話が楽になった話

ここで、よくありそうな場面をひとつ想像してみましょう。

ある会社員は、職場の雑談が少し苦手でした。

同僚と話すときは、なるべく面白い話をしようと頑張ります。

相手が笑ってくれればホッとするけれど、反応が薄いと「今の話、失敗だったかな」と気になってしまいます。

そんなある日、休日の過ごし方を聞かれました。

以前なら、何か特別な出来事を探して話していたところです。

でも、その日は正直に答えました。

「いや、特に何もしてないよ。家でゴロゴロして、気づいたら夕方だった」

すると同僚も笑いながら、「わかる! 私も昼寝したら一日終わった」と返してくれました。

そこから、休日の過ごし方や最近見た動画の話に広がっていきました。

何かすごいことが起きたわけではありません。誰かが爆笑するようなオチもありません。

ただ、いつもより気楽に話せたのです。

これは、考え方を伝えるための一例です。

でも、こんな経験はありませんか?

自分をよく見せようとしているときより、ちょっと格好悪い部分も含めて素直に話したときのほうが、相手との距離が縮まることがあります。

休日に何もしていなくてもいい。話が途中で終わってもいい。

人間、毎日がドラマチックだったら、それはそれで疲れます。

何でもない日常を、そのまま話せることも、心地よい会話の魅力なのです。

今日からできる!会話を楽にする3つの習慣

ここまで読んで、「なるほど。でも、明日から何をすればいいの?」と思った人もいるでしょう。

大丈夫です。いきなり話し上手を目指さなくてもいいんです。

まずは、次の3つから始めてみませんか?

  • 相手の話に、素直な感想をひと言返す。
    「それ、いいね」「大変だったね」など、感じたことを伝えてみましょう。
  • 自分の日常をひとつ話してみる。
    おいしかったランチ、帰り道で見かけた景色、最近ハマっているお菓子。話題は小さくて大丈夫です。
  • 会話の反省会を短めにする。
    うまく話せなかったところばかり探すのではなく、「今日は自分から話しかけられた」と、
    できたことにも目を向けてみましょう。

特におすすめなのは、最後の習慣です。

会話が終わるたびに、自分の言葉を採点していたら疲れてしまいます。

少しくらい言葉に詰まっても、話が脱線しても大丈夫。

そもそも、相手はあなたの会話を一言一句覚えているわけではありません。帰宅したら、晩ごはんのことで頭がいっぱいになっているかもしれません。

そう考えると、少し気が楽になりませんか?

最後に・・・

社会人になると、周りに気を遣う場面が増えます。

だからこそ、せめて普段の会話くらいは、頑張りすぎなくてもいいのではないでしょうか。

面白いことを言わなくてもいい。

話にオチがなくてもいい。

沈黙があっても、慌てなくていい。

自分が感じたことを、飾らずに伝えてみる。

相手の話を、すぐにまとめようとせず聞いてみる。

それだけでも、会話の雰囲気は少しずつ変わっていきます。

明日、誰かと話すときは、気の利いた言葉を探す代わりに、思ったことをひとつ伝えてみてください。

「今日、ちょっと眠いんだよね」

そんなひと言から始まる会話があってもいいんです。

もしかしたら相手も、「わかる。私もコーヒーがないと動けない」と返してくれるかもしれません。

そこから話が広がっても、広がらなくても大丈夫です。

完璧なオチはいらない。

自分の言葉で、無理なく話せる。

それだけで、会話はちゃんと楽しくなるのです。

明日も、気負わず、飾らず、あなたらしく。

そしてできれば、コーヒーを飲む時間くらいは、脳内会議もお休みにしてあげましょう。